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直訳

Super dry.jpgイギリスでは漢字がかなりブームでタトゥーには直訳の和訳をよく見かけます。 Girlpower (強い女性の魅力)というフレーズが90年代後半や2000年頃に流行り,「女力」と書いてあるタトゥーやTシャツは珍しくありませんでした。そこで最近イギリスで大ブームの洋服屋があります。これはアバークロンビー&フィッチのような生地を使った日本語が書いてある洋服を販売する会社です。2005年にベッカムがそこのTシャツを着ていて,その後爆発的に売れるようになりました。ロンドン中,特に若者の間で流行っているTシャツには下記のような日本語が書いてあります。
極度乾燥(しなさい)
堅い天候会社
会社証な

日本人からすると「え?」と思い,目が点になる日本語ですよね。これは今まで日本によく見かけた変な英語の復讐でしょうか?



コミュニケーションの難しさ

photo.JPG人間は必ずしも自分が思っていることを口にするわけではない。あるいは言葉に出来ないものもある。先週文部科学省のロビーに展示している東日本大震災の被害を受けた子供たちの書道を見て,言葉の難しさや深さを痛感しました。そこには一文字の「父」と書いてあるものもあれば,文として「一人にしないで」という言葉もありました。前者はお父さんをなくした小学生が書いたもので,後者はお母さんが未だに見つかっていない9歳の女の子の作品です。

この悲しさをイギリスの友人に説明したく,英訳しました。そこで「父」を Father, Dad, Daddy に訳すのか悩みました。Daddy が一番心を打つような言い回しですけど,日本語だとこれはお父さんやパパに相当する言い回し。日本語では「父」は本人への呼び名として使わないことも念頭に入れる必要もありました。 Father が一番適切かなと思いながら,フォーマルになってしまうため,距離感を感じてしまい、結局私は Daddy を選びました。


同じく「一人にしないで」に関して Don't leave me alone 又はPlease don't leave me alone にするか悩みました。直訳は Don't leave me alone ですけど,Please を入れた方が「お願いだから!」というニュアンスを含めることが出来る。でもそれは言葉を勝手に足すことになるのだろうか?どこまで本人の心を勝手に想像して良いのだろうか?そこがコミュニケーションの悩むところであり難しいところです。



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英国から日本に来日して早20数年。その間法務省で翻訳・通訳12年の経験をもとに独立。現在は、翻訳業と同時に私立大学講師を務める一児の母。娘もバイリンガルに♪と、子育て奮闘中。